2018年11月28日水曜日

「雇用」の負のスパイラルは目をそらしてはいけない。

講談社の、書籍を紹介していくためのコラム?なのかな。
興味深い記事を見つけたのでシェア。

雇用改善の恩恵もナシ…国が放置する「中年フリーター」という大問題
講談社 | 現代新書より

わたしのまわりには、いわゆるフリーターは多い。
し、見渡せば6~7割くらいの人がフリーランスとして働いている。

紹介した記事の、「中年フリーター」とか、「派遣切り」「リストラ」とかの問題は、かなり深刻だし、自分自身もかなり近しい位置にいるので深刻さはひとしおだ。

どうしても労働者の側は、働き手のことばかりを考えて「どうにかしろ!」となってしまうが、実際のところ、この記事の問題は雇用側も被雇用側も目をそらせない大きな問題に、今まさに発展しつつあることだと感じる。

景気が良くなっているという声もあるようだが、消費者サイドや中小企業に働いている人達にはその恩恵が感じられないことは多いんじゃないか。

景気が良い、利益が上がったというのは、国内のごく一部の企業のみ、それも最大手の企業ばかりと言われている。それ以外はまったくもって実感がない、あるいはむしろ経営が苦しくなったという声もあるようだと、いつだかワイドショーで見た記憶がある。


「正規雇用ができない」というのは、労働者側にとっては死活問題ではあるのだが、雇用する側にとっても大きな痛手となっているとも思う。

正規雇用をすれば、会社側が労働者に対してある程度の保証をしてやらなければいけない。
今、会社も「選ばれる時代」になっている。働き方の幅が広がり、企業に就職しなくても収入を得られる方法は無限にあり、アイデア勝負でお金を稼ぐことができるようになった。
今もなお、「学歴」というのは一つの指針になるために大学へ進学する人も多いが、大学を出たからと言ってすべての学生が就職するわけではなくなっている。

企業側は、新卒採用を得るためには福利厚生や賃金、休日などありとあらゆる条件を整えざるを得なくなった。が、それには当然費用が掛かる。そして、新卒を採用した後の教育にも、費用が必要だ。

経営が芳しくないときに、そういった費用はかなり痛い。そして、他の業務を止めてまで新入社員に対して教育をする余裕がない。まず、そんなスキルがある者もいない。

こうした悪循環から、どうしても新卒採用へ二の足を踏む。どうせなら、多少給料を多く支払っても、教育の必要がない中途採用のほうが即戦力になっていいだろうという考えから、求めるスキルが高くなる。これに満たない者は、保証の必要が少ない非正規雇用ということになる。


労働者側は、正規雇用として働くために長けた技術や専門知識が必要になる。
しかし、技術や知識は一日二日で身につくものでは当然ない。したがって、十分なスキルや知識が習得できるまでは泣く泣く非正規雇用として働くしかなくなってしまう。

条件の良い企業を探し当てることができれば、非正規雇用でもスキルを磨いたり資格の勉強ができることもあるだろう。しかし、多くの場合は条件が不十分で、給料が安い。給料が安いから長い時間働かなくてはいけない。長い時間働くから時間が取れない。だから勉強ができない。といった、「ミイラ取りがミイラになった」という状態に陥ってしまう。


その一方で、あえて非正規雇用を選ぶ人もいる。理由はさまざまだ。
この中には、上記でも少し触れた「アイデア勝負でお金が稼げる」ということを知っている人も含まれるだろうし、高学歴で高いスキルを持った人も含まれるだろう。
「選択肢として非正規雇用を選んだ」人の中には、それなりにスキルが高く意識が高い人も当然存在しているし、こういった人たちは年々数を増やしている。

スキルが高く即戦力があり、仕事への意識の高い非正規雇用の人材は、雇用側にとってはこれ以上ないほどありがたい存在であろう。
アルバイトとして入ってきたら、それはそれは助かることこの上ない。そして、こういった人が増えれば、それが当然として認識されるようになってくる。

つまり、教育なしで即戦力で働ける、いわゆる「バイトリーダー」的な存在が普通となり、次に採用するアルバイトに対してもそれを求めるのが当然になっていく。

いずれは、アルバイトをするのにもスキルが必要な時代がやってくるのだ。


働き方が多岐にわたるこの時代、それはそれでいいのかもしれない。
もしかすると、アルバイトや非正規雇用に対しての保証が手厚くなるという理想的な状態になるかもしれない。しかし、大体のことは良い方に変わることはほとんどない。望み薄だ。

バイトリーダー的な存在が普通になった企業は、次は非正規雇用と正規雇用を比較して、正規雇用をふるいにかけにかかるだろう。

上からは、「アルバイトよりも業績が悪い」だとか「アルバイトよりも責任感がない」とチクチク攻撃され、下からは「正社員のくせに」などと冷たい視線を送られる。

せっかく正規雇用として採用されたのに、上からも下からも押し寄せるプレッシャーの波で、どうにも居心地が悪くなり、最後には辞表を出すことにもなりかねない。あるいは、プレッシャーから逃れるために何とか業績を上げようと必死で働き、寝ても覚めても仕事のことばかり考えて過ごし、家で過ごす時間がほとんどないくらいに残業せざるを得ない状態に追い込まれるかもしれない。

そして、それがまた大きな問題となってニュースになった時に、会社はこういうのだ。
「残業を強制したことは一度もない。」

これは他人事ではない。