作家・南出謙吾はほんっと頭おかしいと思う。
(あえて敬称略で呼ばせていただく。なぜなら語感がものすごくいいからだ!)
南出さんとお会いしたのは、お稽古を見に来てくださったときと、
あとは会場入りしてから、中日の朝の本番を見ていただいて、夜のリーディング。
の、2日。
でも言います。ほんっと頭おかしいと思う。
初めてお会いしたお稽古場では、
カチッとしたスーツを身にまとい、パソコンをぽちぽち、
何となく仕事できそう系の「偉い人」ぽい感じでした。
その「偉い人」感にびくびくしながら稽古を進めていたわたしたちを前にし、
「この脚本、変なので、テキストに囚われないでください。」
と言い捨てて颯爽と去っていったのです!(脚色してます。去ってません。)
脚本に囚われまくっていた座組み一同。
めちゃくちゃ厚い雲から光が差し込んだ思いがしました。(主観です。)
そして、つぼさかはつぶやいたのです。「演劇って、楽しいなぁ。」(これはホント。)
南出さんが来て下さった中日、お客さんを交えての小さな飲み会がありました。
そこではあまりお話できずだったのですが、
帰りの電車を待っている間の、南出さんの言葉は忘れられません。
「普段、あんまり飲まないんですよ。早く帰りたいし。早く帰って本書きたい」
どかーーん!!(心の中の音。)
(飲み会で)顔を真っ赤にして、そんなことを無垢に語る大人。
たまらん!むっちゃ好きだ!!
ものすごい、愛のある作品づくりをされてるんだろうなぁと。
南出さんの本には愛がいっぱい詰まってるんだと思わされました。
ところで・・・・。
今回、『みそ味の夜空と』を取り組む機会をいただいて、
初めて南出さん作品に触れることとなりました。
『みそ味の夜空と』という作品の第一印象は、
「スルスルスルっと入ってくる、軟水みたいな脚本」という感じ。
決して複雑なストーリーはなく、単純で、わかりやすい兄妹の話。
その中に、わかるかわかんないかくらいの、ちっちゃいちっちゃい小ネタがちりばめられている作りです。
スルスルっと読めちゃうもんだから、その小ネタが小気味よく、
読み合わせのときは、みんなで笑いながら進めていました。
でも、立ち稽古が始まったら、ちょっとずつ面白くなくなってくる。
お芝居が立ち上がったらペースが落ちて、
面白いタイミングでセリフが聞こえてこなくなるんです。
読み合わせではあんなに面白かったのに、
動きをつくると考え込んで、「整合性」に負けるんです。だから面白くない。
南出さんの作品に出てくる登場人物、少なくとも、『みそ味の夜空と』の人たちは、
ほとんど全員が脊椎で喋ってるんです。
だから突然ワケわからないことを言い出しちゃう。
その、人の「ワケわからない」面白さを、南出さんはうまく文字に起こしていて、
だから、何も考えずに読んでいたときが一番面白かったんだと思います。
お稽古の途中、終盤あたりになって、
「もう一度、ちゃんと読もう」と、台本を見ながら読み合わせをして、
“本来の面白いペース”を再確認したのも初めての経験でした。
演じる方も、脚本への最初の印象がめちゃくちゃ大事なんやと痛感したお稽古でした。
リーディング脚本『かばんの密度』と『ひとりぶんの嘘』は少し違って、
男性目線からと女性目線から描かれた一人称小説みたいな印象。
こちらも結構ストレートなお話で、スルスルっと入ってくるお話。
3作品に共通して言えるのは、
真っ直ぐ、そのまま、まっさらな状態で観たり、聞いたり、読んだりするだけで面白い作品ということ。
きっと、人が好きで、演劇が好きで、好きで、好きで、
好きがいっぱいある人なんだろうなぁ。と勝手に思っています。
それで、惜しみなく出し続ける作家・南出謙吾(あえて敬称略。語感。)はやっぱり頭おかしいと思う。
(※ディスじゃありません。めちゃくちゃ褒めてます。念のため。)