2018年12月13日木曜日

『ぼけますから、よろしくお願いします。』をみたよ。

「母、87歳、認知症。父、95歳、初めての家事。」
というキャッチコピーのこの映画。
『ザ・ノンフィクション』など、ドキュメンタリー作品を数々手がけている 信友直子 さん監督の劇場公開初作品なのだそう。
先月か先々月、ワイドショーをぼーっとみているよきに紹介され、
そのときから、なぜだか心が持っていかれていた。
あ、わたしはコレをみなくてはいけないのだ、と。

しかし、実際のところは、みるにあたってスケジュールや劇場を調べることはなかった。
そのまま、忙しく毎日が過ぎてゆき、何となく日々を送っていた。

つい、先週末のことだ。
これもなぜだか、ふと、調べてみた。「そういえば、まだやっているのかな」と。

ワイドショーで取り上げるくらいなので、大きな劇場でやっているものだと勝手に思っていたが、実際には大阪でやっているのは1か所。
心斎橋のビックステップ内のミニシアター。しかも、平日は1回だけ。
あまり積極的には映画をみるタイプではないので、知らなかった。
ドキュメンタリーは、やっぱり他のジャンルと比べて上演数が少ないのだ。
そして、短い。

ドキュメンタリーで、1万の動員があれば大ヒットと言われているそうで、
この作品は先月の時点ですでに2万人の動員を超えていたらしいので、
まだ今後も引き続き上演される可能性はあるが、
とにかく、上映がわかっているのは、1週間分。

わたしのスケジュールから考えると、今日、しかなかった。


実は、仕事が予定通り進んでおらず、まずまず押し気味、ではあったのだが、
この機会を逃してはいけない。と、慌てて家を出たのだ。

2時間の上演で、1時間50分は泣いていた。

悲しいのか、つらいのか、家族の絆に感動していたのか、わからない。
でも、なぜだか泣いている。

これまで家族の面倒を見続けていたのに、それができなくなってしまった母の苦悩に泣くのか、
これまで家事もできなかった父が、壊れていく妻のために掃除機をかけリンゴを剥く姿に泣くのか、
目の前にボロボロの両親がいてもなお、カメラを止められない娘に泣くのか。
そしてそれでも生きていく家族の絆に泣くのか。


信友一家の出来事は他人事ではない。

寿命はますます延びていくだろう。
けれど、寿命が延びていくのは単純に良いこととは言い切れないのだ。

核家族化が進み、高齢の夫婦のみで生活している人たちは今後もどんどん増えていく。単身で生活している人も多いと聞く。
「まだまだ元気だ。大丈夫だ」と当人たちは言う。でも、当人たちが知らないうちに、どんどんできないことが増えていくのだ。

トランプタワーのようだ。
お互いに、お互いを頼って何とか立つことはできるけれど、少し風が吹けばもうとどまってはおけない。

わたしの目には、この一家が風に吹かれているように映った。そして、今度は自分も。と。


以前、祖母が家の中で転倒して、背骨を骨折しました。圧迫骨折。
わたしのいるときに祖母が救急車で運ばれるのは2回目でした。1度目は、大腿骨。
1度目の時は家の中を這って、自分で救急車を呼んで、お薬手帳を用意して、自分で階段を下りてきていました。たくましい。

2回目は、部屋へやってきて、「背中、どうなってる?」「痛い」「救急車呼んで」と言い、自分で外へ出て隊員さんの担架のところまで歩いていきました。たくましい。

祖母の検査を待つ間、目の前にヘルパーらしき人がいました。そわそわと、方々に電話をかけていました。しばらく後、中年の男性がやってきて、状況を聞いていました。
結局、その中年男性のお父さんは、亡くなりました。病院へ運ばれた時にはもう手遅れ、という状態だったそうです。

『ぼけますから、よろしくお願いします。』をみたあと、なぜかこのことを思い出しました。同じような感情が出てきたのかもしれません。

人が死ぬのは、仕方がないことです。
わたしはそのまわりの人たちをみるほうがツライ。

人が老いるのは、仕方がないことです。
でも、老いた人も生きていかなきゃいけない。
まわりの人も生きていかなきゃいけない。

これは、本当に他人事ではない。
身を削って世に出されたこの作品は、相当な問題提起作となるだろう。と感じました。

『ぼけますから、よろしくお願いします。』は、シネマート心斎橋にて。
16日(日)までは、1430から。17日(月)~21日(金)までは、1215から。
以降のスケジュールはシネマート心斎橋HPよりお調べください。

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